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男が吹いている縦笛がボリビア製ケーナ | 横から見るとこうなる。構えはあくまで自己流 |
1週間で町一番のケーナ吹き 1999.5.1 気が付けばケーナ中毒 1999.5.1 ケーナを友に旅に出よう 1999.5.1 田舎の文化は進化する 1999.6.1 パソコンのディスプレーに向かってケーナを吹こう。 1999.7.1 ケーナの兄貴分ケナッチョ登場 2000.1.10 笛がドンドン増えていく 2000.3.4 いよいよ尺八の出番です。 2000.3.4 ティンホイッスルはアイルランドの香り 2000.3.4 篳篥に沙華利器 2000.3.4 中富良野雅楽団登場 2000.4.2 自分にあった尺八は何処 2000.4.2 昔、少年は皆ハーモニカを吹いていた 2000.4.2 土笛一族の出番です。 2000.4.23
私が初めてケーナを手にしたのが、1998年の大晦日。「リンク」のページで紹介しているフォルクローレと輸入雑貨の店「サリーリ」で1本のボリビア製のケーナを4000円で手にいれました。冬の農閑期は、いつも趣味の大工仕事で暇つぶしをしていたのですが、材料を買うお金にも事欠き、ストーブの前で笛でも吹いて、長い冬を乗り切ろうと考えたわけです。俳優の田中健が日本のケーナ吹きで3本の指に入ると聞かされ、俳優が片手間でやって、そんなにうまくなるなら、誰でもすぐ名人になれるだろうと気楽に始めてみました。(健さん、ごめんなさい。あなたの演奏は素晴らしい。)
初めて吹いてみてどうだったか?ん、、音が出ない。リコーダーと違って、吹き口が無い。従って、笛の顎への当て方,息の出し方のコツを掴まないと全く音が出ない。無闇に息を吹き出しても酸欠で目が回るばかり。サリーリの主人、木下さんの指導で、1時間後に、ようやくピーとかプーとか音だけは出るようになったのでありました。こうなればしめたもの。指使い表を見ながら、ひたすら練習の毎日。
私は、車の運転中でも、右手にハンドル、左手にケーナを持ち、吹きまくりました。1オクターブでも音が出れば、曲が吹けます。基礎練習ばかりしていてもつまらないから、好きな曲をドンドンやってみましょう。「竹田の子守唄」やThe
Beatlesの「In my life」あたりは、単純ながら味わい深く、ケーナの音色がピッタリきます。
ここまでで1週間。狭い町なら、もうあなたは、町一番のケーナ吹きです。
吹けば吹くほどケーナの音は良く通るようになります。起き抜けに一吹き、食後に一吹き、トイレで一吹き、歩きながら一吹き、酒を呑みながら一吹き、勿論パソコンを打ちながら一吹き。。ケーナがいつも手の届く所にないと落ち着かなくなります。
何故これほどまでにケーナに執りつかれてしまったのでしょうか。
日本人の郷愁を呼び起こす、その音色。金管楽器が都会の孤独を唄うとすれば、木管楽器,殊にケーナは田園の哀愁を唄うと言えます。尺八や篠笛に似て、素朴で、もっと柔らかい。吹く程に、豊かな表現が可能になります。
そして、笛という楽器が持つ根源的な魅力。息を吸ったり吐いたりという行為は、人間が生きていくには欠かせないものです。人の生存に直接関わる呼吸によって音を出す笛という楽器は、まさに人の命に最も近い楽器といえるでしょう。
ピーと音が伸びた時の生理的心地良さ。風邪で鼻が詰まって苦しい時に、点鼻薬で、スーと息が通るようになると本当に楽で気持ちいいですよね。敢えて例えれば、あんな気持ちの良さです。
この気持ちの良さを体験したらもうやめられません。気が付けば立派な中毒です。
現在、私はようやく2オクターブがでるようになりました。「りんご追分」から、ケーナ吹きあこがれの「コンドルは飛んでいく」、さらに「アランフェス協奏曲」まで、思いつくままに吹きまくり,自己陶酔の世界にはまり込んでいます。ギターやピアノで挫折し、楽器音痴と自認していた私にとって、ケーナは神様が用意してくれた最後の楽器だと思っています。
ケーナは入りやすくて、なおかつ奥が深い。半音の音程を安定させ、タンギングを覚え、3オクターブ目を出せるようにと、課題は山積。しかし、その音色に飽きる事は無いでしょう。
体力が落ちて、農業が続けられなくなった時、一本のケーナを懐にして放浪の旅に出る事ができればと、見果てぬ夢を抱いています。
ケーナは人口3万人の富良野市の楽器屋でも売っています。安いもので2500円くらいから。高いものは1万円を超えますが、尺八と比べても一桁安い。きっとあなたの町の楽器屋さんでも扱っているでしょう。
教則本も市販されています。ケーナ指使い表、プリントアウトしてご利用下さい。半音は穴半開で。
ケーナに関しての詳しい情報は「リンク」のページをご覧下さい。
「サリーリ」ではケーナをはじめ、チャランゴなどフォルクローレの楽器の通販をしています。
「コスモスファーム」はケーナの名手、芝田さんの宿。お願いすれば生演奏を聴かせてくれます。また、サリーリの木下さんと共に「ドテカボチャス」というフォルクローレのバンドを作り、コンサートを行っています。
「K-point」はケーナの吹き方を易しく紹介しています。関連情報も豊富で,特に入門者には必見です。
<注意>ケーナの吹き過ぎは家族関係を損なう恐れがあります。自分では名演奏のつもりでも、それを毎日聴かされる家族にとっては、拷問です。
全国数千万人のパソコンユーザーの皆さん。立ちあがりが遅くていらいらしていませんか。
いくら高性能の機種に買い換えても、ISDNにしても、Eメールやホームページの接続で待たされることには変わりありません。
呼び出しの僅かな待ち時間を利用して楽器を演奏するというのはどうでしょう。テレビや雑誌を見るのとは違って、楽器ならディスプレーから目を離さずにいられるので、無駄がありませんね。
ただし楽器ならなんでもいいというわけではありません。
ピアノを弾きながら待つというのでは、あまりに大袈裟すぎます。ドラムスなんかもパソコンをすぐ近くに置いておけないという点で失格です。それと弦楽器。これは調弦だけで終わってしまいそうなので不適格でしょう。
やはり小振りの物に限ります。
ということで、候補は、ウクレレ、ハーモニカ、小鼓、それに我らがケーナの四つに絞られました。では一つ一つ検証してみましょう。
まずはウクレレ。いまブームですし、微笑ましいという点ではピカ一でしょう。しかし、調弦が最大の障害になります。また弦を弾く右手がキーボードに当たってとんでもない誤操作を引き起こす危険性もあります。
次にハーモニカ。これはあなどれません。ボブ・ディランばりにホルダーを首にかけてハーモニカをセットすれば、両手が完全に空きます。待ち時間ばかりか、キーボードやマウスを操作しながらでも、いくらでも演奏できます。しかも、足の下にカスタネット、膝の間にシンバルをはさんで、リズムを刻めば、立派なワンマンバンドです。でも、そこまでやるかと言う気も、しなくはない。
続いて、小鼓。ヨオーという掛け声と共にポンポン小鼓を叩くのも悪くはないでしょう。考え様によっては、マラカスやトライアングルなどでも悪くはない。でも、端から見たら間抜けですね。
さ、お待たせしました。ケーナの登場です。ケーナなら普段からパソコンの傍らに置いておける。ディスプレーを見ながらケーナを吹く姿は、インドの蛇使いにも似て、ピタッと決まる。調弦の必要もない。ただし、これだけならハーモニカでもいい。他の楽器では決して真似の出来ないケーナだけの利点は。
下の写真をご覧いただこう。パソコン本体やディスプレーのオン・オフが手を伸ばさないでも、ケーナでできる。更に背中が痒い時の孫の手代わり。猫が悪さをした時の懲らしめの一打。こんなことがハーモニカや小鼓でできるか。
あと何年もしたら、パソコン一台にケーナ一本、というのが世界の常識になるだろう。始めるなら今です。
ケナッチョという名前を初めて聞いたとき、大抵の人が笑います。ナヨナヨとかケチョンケチョンに音が
似ているからでしょう。実物を見てもらいましょう。写真の左側がケーナ。長さ約38センチ、直径約2.5
センチ。対する右側のケナッチョは長さ約50センチ、直径約2.9センチで、ケーナの兄貴分として、貫
禄は十分です。
このケナッチョを、99年9月、サリーリで購入しました。 値段は5000円位いだったかな。ケーナの演 奏の壁に突き当たっていた折りでもあり、ほんの浮気心でケナッチョに手を出したのですが、低音の 響きに魅せられて、それから2ヶ月間はケナッチョ一筋。 音程の差はケーナの基音がG,ケナッチョがDで僅か4度しかないのですが、体全体が共鳴するような心地良さは、ケーナをしのぎます。この2本を使いこなせば演奏の幅が広がること間違いなし。 ただし今後サンポーニャや尺八などにも手が伸びそうでちょっと怖い。
笛が笛を呼ぶ。
1999年の年も押し詰まったある日、本棚の回りの掃除をしていたら、見なれない横笛が出て来た。天から降ったか地から湧いたか。まるで心当たりが無い。ためしにケーナと同じような調子で吹き口にフーと息を吹き付けてみた。意外や軽くピーという音が出た。でも、これが、次々と笛を呼び寄せる悪魔の音色だとは、この時、気付くよしもなかった
2000年一月、笛は6本に増えている。
上の写真を見てください。パソコンのディスプレーの前に勢ぞろいしている笛どもを順番に紹介しましょう。
ディスプレーに一番近いのが、全ての笛の産みの親、一年間吹き続けてきたケーナです。
ケーナの演奏は大きな壁にぶち当たっていました。音はそこそこ出るんですが、どうも音量が足りない。音色はスカスカのやせた音。高音の伸びも悪い。音程も妙だ。フォルクローレのCDに合わせて演奏しようとしても、音が微妙にずれてしまってついて行けない。試しにオルガンで音程を確かめたところ、キーがGの筈が何とFに下がってしまっている。あわてて、サリーリの木下さんに見てもらったところ、ケーナの筒穴がカビやゴミでつまっているのがわかりました。指摘されて自分でもびっくり。掃除して半音もどりましたが、それでも、G調より半音低く、音色もイマイチ。思いきって買い足したのが、2番目のケーナです。
ケーナ2号もボリビア製でR..Vegaのサインがあり、8000円。軽くて音色は軟らかめ。歌口(吹き口)が大きめなので音が出やすく、音量もグッとアップ。ついでに吹き方を木下さんにチェックしてもらったら、ケーナを顎に当てる位置がかなりずれていて、真っ直ぐ息が歌口に当たっていないことが判明。独学だと気をつけないと変な癖がついてしまうのですね。また、楽器は値段が高ければ高いなりの音が出るものなのですね。R.・Vegaのケーナはすごく吹きやすい。つまり、自分にあっているのです。笛には一本一本癖があります。自分に合う笛を見つけるのが上達の近道といえます。
さて、上から3本目がケーナの兄貴、ケナッチョ。
その、下が、尺八。尺八は長さが一尺八寸(約54cm)だからこの名があるんですね。
その下の細めの笛が、横笛で、東京の「多田 音の工房」作。
一番下が悪魔の横笛。いまだに、由来がわからない。日本の横笛を大きく分けると、雅楽に使う竜笛、能や歌舞伎に使う能管、それに祭囃子などで使われる篠笛の三つに分けられます。悪魔の横笛は篠竹(女竹)製の篠笛で、ピ^ヒャラピ^ヒャラおめでたい音がでます。難しいかなと思っていたのですが、ケーナと同じような吹き方、指使いでいけます。
横笛も面白いなと思っていたところ、たまたま富良野のニングルテラスというクラフトショップで多田音の工房の横笛を見つけて、思わず買ってしまったというわけです。もう病気ですね。「多田 音の工房」では、横笛を始め、ケーナ、サンポーニャ、パンパイプなどの笛や打楽器など、国内産の竹を使ってユニークな楽器を作っています。そこで、自分でも笛を作ってみたいという思いがムクムクと起きてきたのですが、この件については、いずれ。
ケーナ、横笛と興味が広がってくると、当然日本の代表的な竹笛、尺八が視界の中に入ってきます。インターネットの通販で値段を調べてみたら、練習用のプラスチックや木の笛で25000円、竹の尺八となったら、安くて5万円、銘柄物で30万円、上は100万円以上と、とても手の出る値段ではありません。
藁をも掴む気持ちで、旭川の古道具屋をはしごして3軒目。「家どん船どん」という小汚い店に、ひびが入って煤けた感じの見るからに年代物の尺八が一本無造作に置いてありました。はやる気持ちを押さえて値札を見たら5000円となっています。夢ではないか。桁が違っているかもしれないと、(50000円ではないかと)良く見たけどやはり5000円で間違い無し。歌口がはがれているけど、試しにふいてみたら、「おお、音が出るぞ」。ひびからの音漏れも無い。「おじさん、こんな値段でいいの」「好きな人なら10万でも買うだろうけど、早い者勝ちだよ。あんたなら、1000円引いて、4000円」「か、か、買ったあ」
尺八は奥が深い。手孔が五つしかないのに、指の押さえ方、歌口への息の当て方を変えるだけで2オクターブ半をカバーできる。それだけに、音程を安定させるまでの苦労はケーナや横笛の比ではない。顎を引いて吹けば半音下がり(メリ)、顎を出せば逆に半音上がる(カリ)。ケーナをフレットのあるギターだとすれば、尺八はバイオリン、または三味線。自分で音程を作らなければならない。今はただ音が出ているだけの状態。しかし首をグルグル回して音を揺らす快感は一度経験したら病み付きに。ひたすら地道な練習あるのみなんでしょうね。
我が尺八の歌口(吹き口)です。買ったときは、黒くなっているところが剥がれていました。普通、ここには、牛の角や骨を削ったものが嵌め込んであります。旭川の邦楽器店に修理の見積もりを依頼したところ、東京まで送って直さなければならないので、安くて2万円とのこと。そこで、富良野市在住の笛クラフト作家、玉田さんに相談した。「初めてだけど面白そうだからやってみましょう」。タガヤサンという固い木を削って歌口にはめてもらったのがこれ。メリとカリがはっきりして、尺八らしい音が出るようにはなりました。
ティンホイッスルはアイルランドの香り
笛が増えるにつれて、笛を使った音楽にも当然興味がわく。聞いたことも無い笛の音色を耳にすると、捨てては置けない。使われている笛が簡単に手に入るとなれば、もう我慢できない。そこで上の笛。ティンホイッスルといいます。アイルランドの代表的な民族楽器です。学校で習うリコーダーに極めて近く、吹けば音はすぐ出ます。ただし、高音は出しやすいけど、低音はビビる感じで、やはりそれなりの練習は必要。アイルランドの人気バンド「チーフタンズ」のCDを聞いて、気に入り、神戸の国際楽器から1500円で購入。ABCDEFGの七つのキーの笛が揃っていて、国際楽器では、アルミ製と真鍮製ペアで計14本セットを13000円で売っている。私のティンホイッスルは真鍮製のD管。アイリッシュ音楽ならではの音色は魅力的だが、練習の順番は、どうしても一番あとになってしまい、今のところ出番は少ない。
篳篥と書いてひちりきと読みます。尺八を吹いている内に、興味はどんどん時代をさかのぼり、雅楽の世界にたどり着きました。雅楽というのは日本古来のみやびの音楽。尺八や(古代尺八は雅楽でも使われていたそうだ)三味線を使う俗樂とは明確に区別され、もともと宗教的、儀式的、さらには呪術的色彩を色濃くもっていたらしい。その雅楽の中でも、旋律を吹き、主役を担うのが、篳篥です。その音色はといえば、独特ではありますが、一番近いのが、何とサキソフォン。舌と呼ばれる葦のリードを鳴らすと、サックスを思わす、金属的な音が出て、バリバリのフリージャズ気分が楽しめます。サックスもリードに葦を使っていますから、音色が似るのは、当然といえば当然。
これが舌。篳篥の管の部分が樹脂製で4000円。舌が1500円ですから、舌の重要さが分かろうと言うもの。天理市のたなかやから購入しましたが、舌は自分で削らなければ音が出ない。しかも削りすぎたら駄目とのこと。削ると言っても一体どこを削ればいいんだよお。紙やすりで恐る恐るチョコチョコこすってはみても、音など出やしない。困り果てて尺八の歌口を直してもらった玉田さんにまたしても泣きついた。「初めてだけど、面白そうだからやってみましょう」
出ました、出ました、とんでもない音が。寝ていた猫は飛び起き、犬は目を丸くして固まってしう。娘は怒った。「お父さん、いい加減にしてよ」。
舌の調整を玉田さんにお願いするのと同時に、篳篥の吹き方を覚えようと、ウェブサイトの雅楽喫茶「はるか」に投稿。同じ趣味を持つ人は、立場がわかるだけに実に親切で、いろいろなアドバイスを頂いた。しかし、結論は、練習には、経験者から直接教わるのが一番ということ。札幌には雅楽会があるが、170kmの距離を通うわけにも行かないし、正直困った。
そうこうするうち、旭川を中心とした上川地区の宮司さんが最近雅楽の練習を始めたと言う情報を得た。富良野神社の禰宜さんも加わっているらしい。富良野神社に出向く。「雅楽なら昔から、中富良野の人に頼んでいたので、中富良野神社で聞いた方がいいですよ」。地元の中富良野神社に出向く。「篳篥なら酒屋の前野さんがやっているはずだけど」。えええ、あの、いつも酒の配達を頼んでいる前野さんが篳篥吹き。雅楽など遠い雅の世界の話だと思いこんでいたら、何という天のいたずら。早速前野さんに連絡をとったのは言うまでも無い。
写真は、2000年3月、中富良野町内のお寺で行われた雅楽団の演奏風景です。団員は総勢8人、この日は二人が欠席し、弦楽器がありませんでしたが、篳篥、笙、竜笛の三管が揃って、雅な音色を響かせました。
雅楽の演奏は、神道系と仏教系の二つの流れがあるらしい。中富良野でも昔は、(といっても、北海道のことだから、何百年もの歴史は無い)神様御用達と仏様御用達の二派があったが、現在、神様派は老齢で消滅。仏様派がかろうじて代替わりして、活動している。演奏法などの違いについては定かでない。
この日は、お寺の法要だったのでしょう。お坊さんが10人近くも祭壇回りに座り、大声でお経をあげます。そして、驚いたことに、途中から、雅楽の演奏が加わり、読経と雅楽の一大合同演奏となったのです。ベートーベンの第9「合唱付き」の仏様バージョンとでもいうのでしょうか。お経と雅楽の組み合わせは、それもありなのかと思わせるほど新鮮な驚きでした。
待合室で笛を直接手にとって吹かしてもらいましたよ。 | ||
竜笛。篠笛の原形で、簡単に音が出 ました。クセの無い透明感の高い音 色です。年代物で頭の部分に鉛が 入っていて随分重い。一本欲しい。 |
お目当ての篳篥です。60年前に作ら れた物とか。本物は風格が違います。 舌の削り方が、私のは自己流なので 音色もかなり違う。一本欲しい。 |
不思議の国の笛、笙。ハーモニカと 同じで、内部にリードがあり、吹いて も吸っても音が出る。十数個ある穴の 押さえ方で音程が変わる。一つの音 は意外と単純だが、幾つかの音が重 なると独特のホニャーという響きに なる。ううう、ひとつ欲しい。 |
さて、ここでわかったことは、一つの楽器を自分勝手に演奏するだけならともかく、他の楽器と合奏したり、お経に合わせようと思ったら、楽譜が読めなきゃ何ともならないという事です。そこで、篳篥の楽譜の登場です。
天理市のたなかやがサービスで送ってくれた天理教の篳篥譜です。 チラロルタアラといっ たカタカナに見なれぬ記号がくっついて、全く意味不明。尺八の譜もロツレチハで責めてく るが、邦楽の譜面の壁は高い。
雅楽の練習が、まず、楽器を手にするよりも、唱歌という譜面読みを優先するのもむべなる かな。気ままな愛好家としては、今後どうしましょうか。
譜面読みは雅楽団の人に教えてもらえるんですが、その意欲が、どうもね、続くかどうかが 問題です。
楽器のの練習は、焦らず、根気良く。でも楽器が、使う人に合っていなかったら、どんな 練習も実を結びません。特に尺八。歌口の形状が合わなければ、どんな名人でもお手上げです。
最近購入した音楽の友社刊、善養寺恵介著「はじめての尺八」にはこうあります。「適切な楽器の選定法と発音法のちょっとした知識がなかったばかりに、雑音の多い不愉快な音に苦しみながらも、ひたすら、出口の見えないトレーニングを、数十年にわたって続けてきたと言う人の、何と多かったことか」
良く分かります。私のケーナがそうでした。ケーナを変えた途端、音量、音質とも、確実に1ランクアップしました。ましてや、尺八なら。
古道具屋で4000円で手に入れた私の尺八。やはり駄目でした。音が出ないうちは自分に合っているのか、合っていないのかも、判りません。練習を重ねるうちに、こりゃ駄目かなという感じが強まってきました。尺八の経験者に見てもらったら、やはり、こりゃ駄目だということになりました。この人に木製の尺八を借りて吹いてみたら、こちらの方が、遥かに吹きやすい。そこで、練習用に貸してもらったのが、写真の、上の尺八です。ただし、この尺八でも、私にとっては、管の直径が太すぎて顎にピタリとこない。僅かながら隙間が空いて、息が漏れてしまう。理想の尺八にめぐり合うのは何時のことやら。お金さへだせば、いくらでも良い尺八は探すことが出来るんでしょうが。
またまた、クセの悪い奴に捕まってしまいました。
尺八の音程を確かめるためのチューナーを買いに立ち寄った、旭川の楽器店のレジ横にこいつは山積みにされていました。「今、ゆずや、山崎まさよしでブレークしているブルースハープ、一つ500円」と張り紙がありました。ハーモニカは前から、気になってはいたのです。雅楽の笙にも通ずるものがあるし。それが、500円とは。もちろん買いました。キーはDでした。次に訪れたときにはAのキーのものを買いました。ブランド銘はサウスバンドとなっています。調べたら中国製だとわかりました。それにしても売値500円なら原価はいくらなんだ。
ブルースハープは別名10穴ハーモニカ。穴は10個でも、一つの穴にリードが二つあり、吹いたときと吸ったときで違う音が出るので3オクターブをカバーできる。他の笛と違って、簡単に音が出るのでストレスが溜まらない。ドミソの和音だって出せる。指を使わないので、年をとって関節痛になっても、楽しめる。なんてったって、小学校の音楽では皆ハーモニカを吹いていたんだ。
金属製のリードの響きが、どうしてこんなにも哀歓を帯びているのだろう。懐かしくて、なおかつ、ロックやフォークやブルースで使われているように、きわめて現代的な音色もする。尺八やケーナは体全体が笛と共鳴する心地よさ。ところが、ハーモニカは、リードの振動が直接脳髄をビリビリと震えさせ、吹きやめても、暫く震えが収まらない。歯茎が快感で震えるのです。
ブルースハープ独特の奏法を覚えるため、CD付き教則本を買った。ところが、このCDがCのキーに合わせて吹きこまれていた。特売のサウスバンドは、AとDのみ。楽器店に置かれていた、いろいろな銘柄のうち、一番吹きやすかったのが、ドイツ・ホーナー社製のマリーンバンド スペシャル20。3000円。ちょっと痛い。でも音の伸びが全然違う。脳髄への突き抜け方が違うんです。
シカゴブルースの大物ハーピスト、ジェイムス・コットンのCDジャケットと愛器。バーボンが似合う。スティービー・ワンダーが吹いているクロマチックハーモニカも欲しいけど、もうきりが無いから、これ以上絶対買わないから。
一体この先どうなってしまうのでしょう。私は決して笛のコレクターではありません。マニアというのもあたらない気がします。ただ、いろいろな笛が吹いてみたいだけなのです。笛の世界がこんなにも奥深いものだったとは。
笛をその材質で分けると、大きく木管と金管とに分類されます。竹笛は木管に入るのでしょう。しかし、古代からある土笛も独自の立場を維持しているのです。下の写真が、現代土笛界の代表選手、オカリーナです。現代オカリーナは他の楽器との合奏も出来るように、12もの手孔を持ち、実に機能的で美しい形をしています。
オカリーナに代表される土笛の殆どは、閉管楽器で、縦笛や横笛が筒の長さと穴の位置で音程が決まるのに対して、笛の体積で音程が変わってきます。音色はあくまで柔らかく、優しい。
旭川博物館には日本で唯一完全な形の縄文時代の土笛が展示されています。売店で見つけたその複製品。大き目の吹き口に対して、爪楊枝で空けたような小さな手孔が四つ。素朴な音色というよりは、風そのものの音とでも言ったほうが近いかな。笛をたどる旅は、平安時代の雅楽から一気に縄文時代まで遡ってしまいました。
手孔が四つでもちゃんと一オクターブが出るという歌い文句にひかれて買ったのが、下の写真左のドレミファ笛。穴の大きさが四つとも異なり、指の押さえ方の組み合わせで、確かに一オクターブが出た。吹き口はオカリーナ型。
写真右は、木で作ったオカリーナ、名づけてコカリナ。黒坂黒太郎というコカリナ界の第一人者のコンサートが、富良野であり、楽器も購入。手孔は前四つと後ろ二つで一オクターブと一音をカバー。音色はケーナとオカリーナを足して二で割った感じで、懐かしい。
さて、こうした土笛を手にしたときから、私の笛体験は大きな転機を迎えたのです。オカリーナ奏者でフルーティストでもある小川堅二さんは自身のウェブページの中でこう言っています。「楽器にはあたりはずれがあります。比較的良いと思われるメーカーも有りますが、すべての製品について良いとはいえません。」じゃあ、どうやって良いオカリーナを手にいれればいいんだろう。「自分の中に表現したい音や、音楽の欲求が出てきたら(自分で)作るしかありません。」ひゃー、最終的には、手作りかい。そういえば、ケーナも、名人は自分で手作りして自分の音を出すという。私は遂に手作り笛の世界の扉を開けてしまったのであった。続きは「手作りの心」のページヘ。