放し飼い養鶏の天国と地獄、有機栽培への遥かな道

ここはどこか?わたしはだれか?

どこか農場は、面積約4ヘクタール。
<1>
鶏や合鴨、犬、猫といった動物、
<2>稲、麦、豆、野菜などの農作物、りんご、あんず、プラム、ハスカップなどの
果樹
,花、庭木、雑草など有用、無用の植物
<3>蜂、くも、とんぼからみみず、微生物まで有用、無用の生き物、
そして<4>人間から成り立っています。

これらが有機的に結びついているのが、有畜複合農業です。
例えば
<1>鶏や合鴨は、卵や肉を提供するだけでは無く、田んぼ、畑、果樹園
草を取り、害虫を食べ、肥料となる糞を落とす。歩く広告塔でもある。 

<2>くず米、はね野菜は家畜の餌。
<3.>犬は狐を退治し、猫は鼠を獲る。                
<4>
蜜蜂は、蜜を集め、果実や野菜の受粉に活躍。
     
     
ただし現実は、ままならない。
例えば

<1>鶏や合鴨は、収穫前の野菜や稲穂をかじり
<2>犬や猫は家畜を追い回してヒヨコや卵を食べ
<3>
蜂は刺す。

理想実現への道は北方領土より遠いのだ。

鶏が自主管理する放し飼い自然養鶏

鶏の飼い方を大きく分けると、鶏を運動場で自由に行動させる放し飼い、ケージに囲って餌や水をやるケージ飼い、その中間で、小屋に囲って土の上で飼う平飼いの3つになります。

企業養鶏では、何十万羽、何百万羽単位のウィンドーレスのケージ飼いがほとんどで、餌、水、温度、湿度、日照時間(電気照明)、採卵など、管理がオートメーション化されており、1年を通じて95%以上の産卵率を維持しています。たまごが安いのも、この効率化追求のおかげといえます。

これに対して、鶏の健康を考え、卵の安全性や味に重点を置いているのが平飼い。規模もせいぜい数万羽単位で、それだけ人の目が届きやすくなります。

わが農場の放し飼い養鶏は、小屋はあるけど24時間出入り自由で、網で囲った運動場を鶏が勝手に走り回り、草や虫をついばみます。飲み水は、溜め池で。トウモロコシ、米ぬか、貝殻等の餌はやりますが、ドラム缶の餌箱に10日分をまとめて入れているので、手間いらず。放任の極致です。

単純に言えば、機械が管理するのがケージ飼い。人が管理するのが平飼い。鶏が自主管理するのが放し飼いです。


どこか農場では鶏はやりたい放題。食って、寝て、交尾して、けんかして、卵を産んで。運動場に餌がなくなると網を乗り越えて畑に侵入。植えたばかりの苗を蹴散らし、収穫前の野菜を食い散らかす。

自宅まで入り込むのには、ほとほと参ります。汚い足で床を汚す。それだけならまだいい、キャットフードを盗み食う。それだけならまだいい。棚に飛びあがって物を落とす。それだけならまだいい。卵のような大きい糞を落とす。硬い糞ならまだいい。べっとりした、軟便で、しかも知らずにそれを裸足で踏みつけた日には、たまらず叫びました。「だれに食わせてもらってると思ってるんだ。」
すると鶏の王様が言いました。「食わせてもらってるのは、お前の方だろう。」

お願いだから猫の餌を食べないで


どこか農場の鶏はどこよりも健康です。極くまれに病気もでますが、抵抗力があるため、広がりません。
健康な鶏が産む卵はおいしいに決まっています。産卵箱を見まわって卵を集めるのが唯一の日課ですから、飼う方は楽です。

どこか農場の放し飼い養鶏の抱える、大問題。これがあるために、他の養鶏家は真似をしない。
@産卵率の低さ。特に冬は、激減。
A外敵の脅威。狐やカラスの襲撃からいかに守るか。
この2大問題を克服できなければ養鶏は成り立たない。



問題解決への取り組みは次回で。

 
合鴨の楽園
今年の合鴨は変だ。妙に人懐っこい。

合鴨とは、アヒルと野生の真鴨のかけ合わせで、大きさも中間。
天敵は、カラス、鷹、狐。5反の田んぼに、毎年80羽程の合鴨のひなを放つが稲の穂が出る前、田んぼから上げる時には、大抵半数に減っている。

特に手の付けられないのがカラスで、こいつの凄いところは学習能力。
田んぼに釣り糸を張り巡らす「引っ掛け作戦」、
アルミ箔で作ったミラーボールや反射テープを張り巡らせる「
目くらまし作戦」
カラスの死体をぶら下げる「見せしめ作戦」、
ロケット花火をヒュルルルルと打ちこむ「恐怖の撃墜作戦」、
磁石をぶら下げて方向感覚を撹乱させる「見えない脅威作戦」、
大声で「カラスのバカヤロー」と叫び石を投げつける、「俺はホントに怒っているんだぞ作戦」。
当初は効果があるのだが、瞬く間に人間の浅知恵を見破り、ひなを襲う。
今年の秘策は、畔に杭を立て黒いゴムホースを巻きつけてカラスの嫌いな蛇に見せかける「ドッキリ作戦」........のはずだったんですが、やめました。カラスの笑い声が聞こえたからです。
無駄な抵抗はしない。じゃあ合鴨は全滅してもいいのか?

黒い悪魔、または田舎の掃除屋

目に見える抵抗から見えない抵抗へ方針の大転換です。
カラスが狙うのはヒナが畔に上がって休んでいる時。または,浅水で田んぼに降りても歩いてヒナを追いかけられるような時。
そこで、常に田んぼに深く水を張るようにしました。これならカラスが田んぼに降りられないし、畔で休んでいる所をおそわれても、水に飛び込めば、難を逃れると言うわけです。
また、去年までだと、田んぼでカラスがカーと鳴けば、農作業を放り出して、田んぼに駆けつけていましたが、今年は完全に無視。心配してもきりがない。鴨の為に田んぼをやっているわけではないんだ。
いまのところ、被害は例年並にでています。抵抗してもしなくても被害がでるなら、しない方がいい、というのが、とりあえずの結論です。

合鴨にとって、夏の田んぼは
自由に遊びまわれる楽園ですが、それは生死を賭けた野生の世界でもあるのです。
散歩から帰る合鴨、夕日を浴びて。